ミニ書斎をつくる 「狭くてもいいから自分の書斎が欲しい」に応えよう

「狭くてもいいから自分の書斎が欲しい」という声を多く聞いています。人は明日への英気を養うために何かに熱中できることは大事なことです。書斎は、読書や書き物、仕事だけではなく、その人の様々な趣味に没頭できる場であると思います。

ところでミニ書斎とはどういうことなのでしょうか。ミニ書斎の定義は、書斎のように単独の一室ではなく、既存の住宅の中のリビング(居間)や、寝室、台所、廊下、階段下等を仕切ってつくるその人専用の単独スペースのことをいいます。そこに書斎の三種の神器である「本箱」「デスク」「椅子」さえあって、こもり感のある、その人だけの単独の空間のことをいいます。

ミニ書斎は、言葉通りミニです。狭い空間なのです。3畳以下、2畳か1畳かもしれません。リビングや廊下等の隙間スペースを活用するわけですから広いわけはありません。ミニ書斎は、狭い空間でも居心地がよくて何かに没頭できる場所であればよいのです。

本稿では、独立した書斎を持っているケースは想定していません。既存の住宅で独立した書斎がないから空きスペースを探してミニ書斎をつくろうということです。

目次

書斎とミニ書斎の違い

物置になっているスペースがミニ書斎に変わる

goo辞書で、「しょさい【書斎】」を調べると「個人の家で、読書や書き物をするための部屋。書室」とあります。新漢語林(大修館書店刊)では「書物を読むへや。勉強部屋」とあります。それらからするとミニ書斎は、さしずめ「個人の家で、読書や書き物をするための3畳以下の狭い部屋。狭い書室」ということにでもなるでしょうか。

しかし、世間には読書や書き物をしない人も少数ではあるが存在するのです。そのような人の家には形状的には書斎であるけれども本質的には書斎と呼べないのでしょうか。書斎は読書や書き物をするだけでなく趣味に没頭したりして明日への英気を養う部屋のことをいうのではないでしょうか。

書斎を英訳すると一般的には「study」「library」となります。しかし別の英訳もあるのです。「den」という英語です。SUUMO住宅用語大辞典で「den」を調べると「巣、ほら穴を意味する英語からきた言葉で、書斎や趣味を楽しむための部屋という意味で使われる。特に広さや形の基準はなく、隠れ家的な用途を持つ部屋」とある。

書斎とミニ書斎の違いは、書斎は単独の部屋でミニ書斎は後づけで家の狭い空きスペースをその人の好きなことや趣味に没頭する場ということになります。大事なことは単独か後づけかや、大きいとか狭いとかということではありません。その人が好きなことや趣味に没頭したり何もしなくてボーとしたり、とにかく明日への英気を養う充電できるような場のことをいうのです。

「二畳で豊かに住む」西和夫著という本があります。すこし、引用いたします。

彫刻家で詩人の高村光太郎は、戦災で焼け出され、花巻の奥の山小屋に一人で住む。畳はわずか三枚半、そこにふとんを敷く。長崎の医者永井隆は、二畳の部屋で病に臥しつつ子供二人と住み、世界平和を訴えた。

明治の文豪夏目漱石は、若いころ、友人と二人で二畳の部屋に住んだ。この空間があの漱石を育てた。俳句と和歌の正岡子規は、病気の身を横たえるふとん一枚が我が世界だと書く。

西和夫著「二畳で豊かに住む」はじめに・集英社新書刊

これを読むと時代は古いはなしではありますが、広さが豊かさでないことがよくわかります。ミニと冠がついていようがその書斎の本当の意味を実践していくことが大事なのです。

図1:あなたは、ご自宅に、
    自分専用の部屋がありますか?
    (単一回答・対象600人)    

図1:あなたは、ご自宅に、自分専用の部屋がありますか?(単一回答・対象600人)

 図2:あなたの自分専用の部屋の広さは何帖ですか?(単一回答・対象229人)

図2:あなたの自分専用の部屋の広さは何帖ですか?(単一回答・対象229人)

※アットホーム(株) 「“夫の部屋の有無”と“自宅の居心地”に関するアンケート調査」2011年

https://www.fudousan.or.jp/topics/1111/11_5.html

人は、時にたった一人で孤独に浸り、自分自身と向き合う時間が必要なのです。書斎にこもって自分自身を見つめ直す時間が必要なのです。そのようにこもれる場がミニ書斎なのであります。独立した書斎がない場合には、是非、家の中で空きスペースを見つけてミニ書斎をつくろうではありませんか。

ミニ書斎をつくろう

押入れもミニ書斎に変身するか?

ミニ書斎に必要なものは何でしょうか。ミニ書斎に必要なものは「本棚」「デスク」「椅子」の三種の神器だけです。大切なのはその三種の神器があった上でこもり感があり、そして家族からも認知してもらえることです。

どこにミニ書斎を設置するか

「本棚」「デスク」「椅子」が必要とはいっても、先ずは家の中のどこにミニ書斎を設置するかを決めなければなりません。

設置場所の探し方は、現在家の中で、家族のだれも占有していない場所を探すことです。これは、消去法で探していくと候補がしぼられていきます。また、家の中でデッドスペースはないでしょうか。そうです、引っ越し当初は客間として使用目的を考えていた部屋がいつの間にか物置になったりしていないでしょうか。こういうデッドスペースの荷物や家具の配置を少し変えるだけで空きスペースが生まれる可能性があるのです。

今はやりのエコ生活にするためのもミニ書斎の場所確保のための空きスペース探索が断捨離の実践にもなり多くの波及効果を及ぼす事にもなるのです。

ミニ書斎の設置場所は決まりましたね。夫婦共有の寝室の一角を配偶者の許可を得た、リビングのデッドスペースを確保した、廊下の奥の荷物置き場をかたずけた、階段下のスペースを発見した等々。ミニ書斎の位置が決まれば一気に進めていきましょう。

「三種の神器」のサイズを検討しよう

書斎の「三種の神器」は「本棚」「デスク」「椅子」です。本を読んだり、仕事をしたり、趣味に没頭したり、ボ~っとしたり、こもり感の中で自分を見つめるにも「本棚」「デスク」「椅子」は必須です。「俺は和室派だから平机と座布団でいい」という人も中にはいるでしょうが、おススメではありません。それはミニ書斎という折角の空間を確保したからには、そこには高さも有効に使いたいからです。椅子も大体40㎝くらいの高さがある訳ですから机の下にもちょっとした荷物が置くことが出来ますし、椅子に座っていれば立ち上がりも楽ですし、本棚にも手が伸ばしやすいです。

本棚はものによっては壁かわりになり家族の目線を遮りミニ書斎にこもり感を与える最大のツールになることもあります。今まで使っていたデスクや椅子もなるべくなら使いたいものです。先に位置を決めましたが当然、三種の神器の大きさから決めるパターンもあります。どちらにしてもミニ書斎の目的である自分だけの大切な時間を過ごせる空間を創出できているかどうかが大事なのです。

家族とのつながりは優先する

自分の最高の空間をつくったとしてもミニ書斎に引きこもった状態になり家族との関係が希薄になったり軋轢や分断をきたしたりしたら意味がありません。家族があっての自分ですし、家族一人一人が幸せになっていくための住まいでもあります。

ミニ書斎つくりの段階で、家族に相談し理解を得ながら進めることが大事です。完成してからも家族に感謝しながら自分のこもり場であるミニ書斎を使っていきましょう。場合によってはリビングの一角をミニ書斎としている場合もあるでしょう。その場合には、ゴールデンタイムに子供がテレビを見てたりしてうるさいこともあるでしょう。防音は不可能ですから、ここはお互い様。ミニ書斎の利用時間は夜9時以降にするとか、お互いにヘッドホンやイヤホンを使用するとか工夫したいものです。

ミニ書斎をつくったら家族関係が悪くなったというのでは本末転倒です。

ミニ書斎の具体的提案

既存住宅の空きスペースからミニ書斎をつくっていく訳です。住宅の形状によって、また家族構成によっても千差万別です。その上で、具体的提案をいたします。

廊下につくる

バリアフリー化が進んでいる昨今です。従来の住宅より廊下を広くつくってある住宅も多くなってきました。一般的な廊下の幅は75~78㎝。車椅子がらくらく通れるようにつくられたバリアフリー住宅では廊下幅が90~100㎝程度と広くとってある場合が多いようです。幅が90㎝以上あればミニ書斎は充分にとれると思います。しかし、廊下は廊下、家族の生活の邪魔になるようなデスク等の配置は出来ません。

生活の邪魔にならないことを前提に本棚を設置しましょう。奥行きが浅め(21㎝程度)で背の高い(180㎝以上)の本棚を選びましょう。廊下の片面の壁にピッタリとつけましょう。本棚は背板のないものでもいいと思います。出来れば本棚を2架用意をして、その間に壁を背にして椅子を置きます。2架の本棚に挟まれるように椅子を置くとこもり感がでます。その前に簡易式か小さい机を配置すれば出来上がりです。

廊下が広い住宅の方にお勧めです。

リビングにつくる

住宅において一番広いスペースをとっているのはやはりリビングでしょう。意外に一角が空きスペースになり荷物置き場になっている場合も多いようです。そこが狙いめです。家族共有のスペースですので家族の理解を得たら進めるのがいいでしょう。

家族共用でにぎやかな場でもあるのであまり背の高くない本棚(150㎝くらい)を2~3架用意しましょう。それは、ミニ書斎の居場所を本棚で囲んでこもり感を出すためです。本棚で家族からは目隠しをする感じになります。また、家族が通常居る場所を背にするように、つまり壁に向かって机を配置するようにして家族と目が合わないようにする工夫が大事になります。

また、リビングは家族共有の場なのでにぎやかでもあるでしょう。前章でも書いたようにミニ書斎の利用時間を考えることも必要になるかもしれません。

寝室につくる

夫婦共有の寝室を想定しています。個人の寝室であれば既にミニ書斎化してるでしょうから省きます。配偶者の理解を得て進めましょう。リビングや廊下と違って寝室の使用者は自分と配偶者だけですからあまり面倒はありませんし、静かな環境になりやすいのでミニ書斎に適しています。

寝室をミニ書斎にする場合に先ずやることはレイアウトの変更です。配偶者のベットと自分のベットの配置。それにミニ書斎の位置関係です。ポイントは、配偶者が休んでいる時にミニ書斎から漏れる光が配偶者に届かないことです。そのために背板のある背の高い本棚(180㎝くらい)を2架は用意しましょう。デスクの上には一灯のスタンドを用意しましょう。また、PCなどの機器類は音があまり出ないものを使用しましょう。

押入れにつくる

盲点なのが押入れです。これには2パターンあります。押入れにはお客様用として用意した布団が何年も使用しないで物置と化していることが多々あります。

押入れの中段をデスクに使用する

押入れは建築基準法で定める居室ではありません。リビング、寝室、台所などは居室ですが、玄関、トイレ、浴室などは居室ではありません。押入れも単なる収納スペースです。押入れのサイズは一定です。1間=6尺=約182㎝が基準です。押入れは一般的に、幅が1間、奥行きが半間、襖が2枚なのです。

押入れをミニ書斎にするとはどういうふうになるのでしょうか。押入れを半間だけ利用するのです。押し入れ内は半間だけ片づけ、半間だけ利用します。中段をデスクとして利用します。デスクのサイズは半間×半間ですから充分なスペースとなります。デスクの上には本を並べるにも充分でしょう。

デメリットは椅子の後、つまり自分の背後がオープンなので書斎特有のこもり感が得にくいことでしょうか。本棚を背後や脇に置きこもり感を創出できるようにしましょう。

押入れの中段をはずしてしまう

いっそのこと押入れの中段をはずしてしまうと1間×1間×半間の大変充実した空間がミニ書斎に変身してしまいます。押入れは居室ではなく収納スペースなので中段をはずしても構造上の問題はありません。しかし、押入れ床面は布団等を収納する強度で作られていますのでミニ書斎にする場合には押入れの床面に厚さ12㎜程度の合板を敷き床の強度を強化しておくことは必須となります。デスクや椅子、本棚は押入れスペースに合わせて考えましょう。

デメリットは、換気や空調に問題ありです。押入れの戸を使用している場合には完全密室になってこもり感は最高ですが、夏には熱中症になりかねません。その場合には、部屋のエアコンや扇風機等をうまく利用し空調管理をしっかりすることです。

具体的提案をしましたが本棚の耐震化は時代の必須となります。万一の地震等の場合に本棚が倒れたりしないようにしておきましょう。

まとめ ミニ書斎で充実した人生を生きよう

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手段と目的を混同しない

明治の大文豪夏目漱石が友人二人で二畳に住んだということに触れましたが人間はどんなところでも衣食住さえしっかりしていればどんなところでも住めるということです。さすがにその環境では書斎はなかったでしょうが。

住の環境は人間にとって大変に重要な要素でありますが、その中でも、自分を見つめ自分を高めることが出来る書斎を持つということは大変に有意義なことです。家族の理解をいただき、ミニ書斎をつくり、自分も家族もより良い人生を生きていきたいものです。

筆者の執筆動機は以下のブログを確認ください。👇👇👇

https://flag-hata.com/2024/05/29/%e3%81%99%e3%81%a6%e3%81%8d%e3%81%aa%e6%9b%b8%e6%96%8e%e3%82%92%e3%81%a4%e3%81%8f%e3%82%8a%e3%81%9f%e3%81%84%e3%80%80%e8%87%aa%e5%88%86%e3%81%ae%e8%b4%85%e6%b2%a2%e3%81%aa%e6%99%82%e9%96%93%e3%82%92/

参考文献

  • 杉浦伝宗著「ミニ書斎をつくろうー自宅にスペースがなくても書斎を持てる!」メディアファクトリー新書・KADOKAWA刊
  • 西和夫著「二畳で豊かに住む」集英社新書・集英社刊
  • 図書編集部編「書斎の王様」岩波新書・岩波書店刊
  • 成美堂出版編集部編「週末書斎術」成美堂出版刊
  • 宇田川悟著「書斎探訪」河出書房新社刊
  • レスリー・ゲデス=ブラウン著「夢の本棚のあるインテリア」エクスナレッジ刊
  • 石橋弘次著「思いどおりの部屋がつくれる!男のインテリア大事典」成美堂出版刊
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