この写真は、建築中の自宅2階の概略図面一部です。「書斎」と表記してありますが「自室兼寝間」です。「書庫」は本棚を含めた収納棚を設置予定です。
新築時に、書斎は有り?無し?価格高騰の折で予算が限られる。やはり、書斎は欲しい。けれども、何処でも本は読める、仕事も、趣味も出来る。書斎を求めているのは心の憩いの場を求めているということ。
SUUMOリサーチセンターは、注文住宅動向・トレンド調査(注文住宅建築者対象・2021~2022年実施)では住宅新築の際に「取り入れたい間取り」についてアンケートしています。
「取り入れたい間取りは何ですか?」
※取り入れたい間取りについて、29項目+その他で尋ね、2022年のスコアの高い順に10位まで掲載
*…調査票では以下のような( )付きで提示
パントリー:パントリー(キッチン付近に設置された大容量の収納)
室内干しスペース:室内干しスペース(洗濯など)
回遊動線:回遊動線(玄関/キッチン/洗面室回遊・キッチン/バス回遊などの間取り)
【5つまでの複数回答】
【全国】 2022年 2021年 比較
「間取り」順位 2022年 2021年
1 位 ウォークインクローゼット 31.9% 37.3%
2 位 パントリー* 29.5% 33.2%
3 位 カウンターキッチン 25.5% 30.5%
4 位 シューズクローク 24.9% 27.7%
5 位 室内干しスペース* 23.2% 26.3%
6 位 アイランドキッチン 23.0% 22.8%
7 位 ゆっくり入浴できる広い浴室 17.3% 15.4%
8 位 畳コーナー 15.5% 16.1%
9 位 オープンなLDK 15.3% 14.9%
10位 回遊動線* 14.8% 14.6%
このデーターから分かることは10位以内には書斎は入っていないということです。実際には、この「取り入れたい間取りは?」の質問以外にも、「家を建てるのに何を一番重視しますか?」「価格高騰の中でどのような家を建てますか?」などの人生の三大出費と言われる住宅費にとって大切な質問項目が多くあります。
「耐震化のしっかりした家が欲しい」「ZEHで高気密高断熱な家で光熱費を安くしたい」「資材高騰の折なのでコンパクトな家がいい」等、時代を象徴するような特徴が感じられます。
収納重視がこのアンケート結果からは感じ取れますね。ということは、本棚、書庫も充実するために書斎は欲しいということにも通じていくことになるのではないでしょうか。
それでは、議論が沸騰中の「書斎はいるのか」「書斎はいらないのか」について考えていきましょう。
書斎のメリットは?
先ずは書斎のメリットです。
メリット1 自分だけの自由な空間と時間
書斎の一番のメリットは自分だけの自由な空間と時間がもてることでしょう。
家族構成によりますが、ばあちゃんの部屋はあるでしょうか?子供部屋は?夫婦の寝室は一緒ですか?間取りも変わってきます。
ゆっくりと読書に集中したい、子ども怪獣から解放されたい、趣味は家族といえども見られたくない…書斎はそんな自分だけの自由な空間として最高の場となります。
メリット2 インテリアを好みにする
夫婦でも、「俺は和風がいい」「私は洋風がいい」と好みの違いがある場合もあるでしょう。
家全体のインテリアは妻好みにすることが平和だと思います。その上で「書斎くらいは自分好みにさせてくれ」でいけるといいですね。
メリット3 オン、オフの切り替えが出来る
リビングやダイニングだと、仕事をする場合でも家族と一緒の場面が多いのでオン、オフの切り替えが出来にくいものです。
食事のあと、そのままダラダラとテレビを見たりと、切り替えが難しいのは誰でも実感していると思います。
俳優さんが舞台の合間に楽屋(控室)で息抜きしたり、準備したりする如く、書斎があれば場所が変わることで、オン、オフの気持ちの切り替えが簡単に出来ます。
メリット4 収納場所として最適
冒頭のアンケートでもわかるように、収納スペースを考えての間取りを考える方が多いのです。
本を始め、自分の趣味のものや、仕事関連のものも、リビングに置きっぱなし、散らかしておくわけにはいきません。
書斎は「自分」を収納するのみならず、「自分のもの」全ての収納場所としては最適な収納スペースなのです。
メリット5 作業の中断・再開が楽
家族共有スペースでは、作業を中断するときに、いちいち片付けなければいけません。書斎であれば作業中断でもいちいち片づける必要がなくなります。
読書の場合にはあまり感じませんが、仕事などで関連の資料や材料がいる場合などは手元に多くのものが氾濫しているので誰もさわれない書斎と言う場は威力を発揮するのです。
書斎のデメリットは?
次に書斎のデメリットです。
デメリット1 家族のコミュニケーションが減る
書斎にばかりこもりっきりになるのは家族との団らんが減ることになりよくありません。家族のコミュニケーションは人生にとって大切なエネルギーになるものです。
子育て世代であれば夫婦ともに子どもを中心に時間を過ごす事も大事です。夕食後、1時間は家族と過ごす、その後に書斎に行くというようなルールを決めていくことがよいでしょう。
デメリット2 物置になってしまう
せっかく書斎をつくったのにあまり書斎を使わないのではもったいない。それでは「これではもっとリビングを広げておけばよかった」ということになってしまいます。
物置になってしまっては残念です。
デメリット3 いつの間にか使わないデッドスペースに
物置になるのだったらまだ救いがあります。収納スペースの確保がアンケート結果でわかる通りニーズなのですから。
いつの間にか使わないデットスペースにはしないでください。
書斎をおすすめしたいのはこんな家庭
書斎は重宝な空間です。こんな家庭には価値ある書斎となるでしょう。
おすすめ家庭1 自宅で長時間仕事をする
コロナ禍は乗り越えましたがリモートワークが一般化し、在宅勤務も恒常的になっている方も多くなっています。
自宅で長時間仕事をする方には書斎が必要です。リモートワークではテレビ会議もありますし、出来れば書斎のように区切られた空間は大事になります。
おすすめ家庭2 趣味がある
趣味は人生を豊かにします。趣味は人それぞれ様々です。趣味のないのも自由ですが、趣味が一つでなく複数お持ちの方もいます。夫婦共通の趣味の方もいます。
音楽や芸術など音が出たり動きがあるものであれば、やはり区切られた空間の書斎は有りがたいものです。
おすすめ家庭3 夫婦の私物やコレクションが多い
趣味のコレクションが多い場合や、蔵書が多いこともあります。収納スペースとしての書斎の意義も大きいものと思います。
家族がワイワイガヤガヤしているリビングに趣味の高価なコレクションは破損の危険にさらされているのと同じことなので、やはり書斎には大切な本やコレクションは収納したいです。
書斎がいらないのはこんな家庭
あるに越したことはありませんが書斎がなくても大丈夫という家庭もあります。
いらない家庭1 家では仕事をしない・趣味がない
仕事は職場のみと割り切って家では仕事をしないであれば書斎はなくてもいいかもしれません。趣味もなければ同じくです。なんか寂しいですね。
いらない家庭2 なるべく家族で過ごしたい
家族で過ごしたいは大事なことです。書斎がなくて家族と一緒でも読書も出来るし、仕事も、趣味も出来ます。
書斎の形式としてはオープン・スペースの書斎もあります。リビング内に設置する書斎もあります。あえて区切られていないという意味で書斎と言うか言わないかということもあります。
いらない家庭3 ほとんど出先、在宅は寝るだけ
仕事が多忙、休みはアウトドア。家は寝るだけ。
ほとんど在宅が出来ないのであれば書斎はいらないですね。
いらない家庭4 夫婦別部屋
夫婦それぞれの部屋があれば、それぞれの寝室であり、それぞれの書斎ともなるわけです。
仲の良し悪しとは関係なく、夫婦別部屋は年齢とともに増える傾向にもあるようです。夫婦とはいえ別部屋でそれぞれの自由な時間を過ごせるのは贅沢でもあります。
あえて書斎はいらないですね。
書斎のプランニングのポイントは?
書斎がいる、いらないを考えて来ましたが、ここからは「やっぱり、書斎が必要だ」という場合に、書斎をプランニングしていくポイントを考えていきましょう。
書斎をプランニングするときには、以下のポイントをおさえていきましょう。
- 書斎はだれが使うのか?書斎は専有か、共有か?
- 書斎の用途は?主に何に使うのか?
- 何を収納するのか?
- いつ使うのか?
要は5W1Hです。「書斎」をいつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)使うかという目的の明確化が重要です。
そのうえで完全な個室の書斎がいいのか、リビングなどの一角に設ける簡易なオープンな書斎がいいのかを考えていきます。
プライベートの自由な時間が欲しいのであれば個室にしたほうがいいですし、作業の中断・再開が楽というのが目的なら、簡易でオープンな書斎でもいいかもしれません。
書斎の広さや場所はどうでしょうか。
書斎の広さは?
書斎の必要な広さは、書斎でおこなう作業と収納するものの量によって違ってきます。
場所をとる作業はおこなわず、収納するものも少ない場合、極端ではありますが1畳でも大丈夫なのです。
最適な広さは「狭いほうが落ち着く」「広くないと疲れる」など、使う人の好みにも左右されますが、34畳ぐらいが一般的な広さといえます。
十分な広さが取れない場合は、リビングやダイニングに併設する簡易にオープンな書斎にしたほうが圧迫感は少なくなります。
小さな書斎コーナーなら、押入れや階段下に設けることも出来るのです。
書斎の場所は?
家の中で書斎を設けるベストな場所はどこでしょうか?
これも目的次第といえそうです。
リビングと違って、書斎は必ずしも方角にとらわれることはありません。
読書には、北側のほうが安定した光を得ることができるとも思われます。
また昼間と夜で家族の生活リズムに応じてリビングの近くや家族の寝室と離して配置したほうが、音などは気にならなくなるということもあります。
わりと大切なのが近隣の景色です。書斎の窓ごしに見える景観が良ければ最大に活用したいものです。
例えば仕事の合間に外を見たとき、庭の緑が見えれば気分転換なるし、人や車の動きでリフレッシュできるかもしれません。
部屋の一角に設ける簡易なオープンの書斎は、どの部屋に設けるかでプランニングのポイントが変わってきます。
リビングやダイニングの場合
家事のすき間時間を利用して、読書したり、趣味をしたいのなら、キッチンから近いダイニングやリビングに書斎コーナーをつくると便利です。
ダイニングやリビングに書斎があると家族の動きを見守りながら自分の時間が過ごせます。
また普段はオープンでも、必要な時に閉められる引き戸やカーテンをつけておけば、急な来客のときに書斎への目線を遮断することが出来ます。
たとえ小さい書斎でも個室の場合は冷暖房が必要になりますが、部屋の一角に設置する簡易な書斎コーナーなら、メインの部屋の冷暖房を利用できるので安上がりになります。
エアコンの位置、容量も、書斎の中にも空気が循環するように考えたいものです。
寝室の場合
昼間だけ使用する書斎なら問題ありませんが、夜も作業する場合は、相手の眠りの妨げないようにすることが必要です。
仕切りを設けて、寝間側に光や音が漏れないように計画しましょう。
廊下・階段脇などの場合
通路的な場所にカウンターなどを設けてワークスペースにすることもできます。
部屋の中につくるのと違って、ほかの家族との距離もほどほどに保つことができます。
ただし、もともと全館空調の家は別として、廊下や階段にまで冷暖房をつけることになり、コストアップの可能性があることも考慮しなければなりません。
まとめ
わが家にとって書斎は本当に必要か、クリアになったでしょうか?
書斎をつくるか、つくらないか、どんな書斎をつくるかは、これからの家族のライフスタイルにも大きな影響があります。
是非、夫婦家族で話し合って、すてきな書斎をつくっていきましょう。